【感想】異国館ダンディ

満足度:★★★☆☆


花とゆめで1990年代に連載されていた作品ぽいです。電子書籍化はされていませんが中古で安価に手に入ります。全8巻で、ほぼ全ての巻にそこそこのボリュームの読み切り作品あり。


ざっくりとしたあらすじは、女子高生が親の仇を取るために、大財閥の坊ちゃんのところへ腹違いの妹として乗り込みにいく、というものです。


よかったところ

不比等(相手の男)と蔦子(主人公)のキャラクター性。蔦子は何でもズバッとものを言うタイプで、少女漫画の「気が強くて明るい女の子」の類型です。クヨクヨ悩むことが少ないのでストーリーもテンポ良く進みます。不比等は頭が切れるという設定はよくある感じですが、掴み所がなく面白い性格です。天才キャラにありがちな冷徹ナルシストぽさはそんなにないです。

・絵柄。古さはあり、そういう意味での好みはかなり分かれそうですが綺麗です。頭身が崩れている印象は受けなかったので、古い絵柄が苦手でも読めそうに思えました。


気になったところ

・後半のストーリーが駆け足すぎる。とくに、不比等のいる秋葉家とライバル関係にあるレオンハルト家が出てきてからの物語は急展開すぎます。さらに終わり方も連載打ち切りか?と言いたくなるレベル(多分そんなことはないと思うんですが……)に丸投げで、やはり少女漫画としては結ばれた後のことをもう少し深堀りしてほしいと思いました。

・恋愛要素が非常に少ない。結ばれたところで物語が完結しており、作中不比等と蔦子はずっと「兄妹」の関係のため、それを逸脱した行為は全くありません。最後に1回キスして終わりです。

・蔦子を除くキャラクターの心情描写が不足している。とくに不比等については、蔦子を妹として迎え入れた最初の場面から、恋愛感情の芽生え・婚約して出て行ってしまった蔦子を取り返すラストシーンに至るまで、全てにおいて心境の変化の描かれ方が圧倒的に足りておらず、なぜそう考えたのか、が全然分かりません。蔦子を家族として信頼していく様子はわかるんですが、恋愛は一体どこから……?という感じです。

・読み切りのコマ割りが、この時代のノリに慣れていないと手こずりそうな感じです。私はリアルタイム世代ではないのでかなり読みづらく感じたし、内容があまり把握できませんでした。ただこれは読み切り特有のスピード感によるもので、本編自体は普通に読めました。


少女漫画らしい設定や絵柄ではありつつも、花とゆめ作品特有の、王道からは少し外した物語でかなり楽しめました。90年代の漫画はまだまだ未開拓なので勉強していきたいところです。