【感想】魔法使いの娘

小さい頃からずっと好きだった作品なのですが、夏休みということで改めて読み返してみました。那州雪絵先生といえば代表作は「ここはグリーンウッド」でしょうか。


物語は、生活能力は絶無だが陰陽師としての実力は最上級、という義理の父と暮らしながら、その仕事に巻き込まれていく……というのが大筋です。主人公の初音は父の仕事を継ぎたくないものの、父・無山は継がせる気満々。

本作はサブキャラクターが個性的で、なかでも兵吾・小八汰・朋絵ちゃん・無畏の4人が大好きです。1話では割と使い捨てキャラぽい登場の仕方のわりに、最後までずっと初音のそばにいる兵吾はかなり好感が持てました。登場キャラクターが比較的人間の心がないがちなので、兵吾みたいなキャラがメインに一人いると安心しますね(?)


絵柄としては、細やかで美麗!みたいな感じとは違うものの、画面が非常に読みやすく簡潔だと思います。時代に左右されない絵柄なので、連載開始当初から20年弱経っていても全く抵抗なく読めます。男性キャラの描き分けが微妙に感じる点はたまにありますが、作中で大量に出てくる妖怪・化け物の種類は非常に豊富です。

作中では、「化け物」と「人間」の違いが丁寧に描かれていると感じました。化け物は人から見てかなり非倫理的な行動を取るのですが、彼らは彼らなりのポリシーで動いていることもあり、人間のエゴにハッと気付かせられるような話もあります。化け物には化け物の情があったり、それとも全くなかったり。

そんな化け物と人間の中間にぽつんと立っているのが、初音の父・無山です。初音にとって無山は育ての親であり、大切な「パパ」でありながらも、同時に絶対に越えなくてはならない壁です。初音の成長は無山と切って離すことはできません。


初音の成長を描いた作品ですが、初音が歩みを進めることで兵吾も進み、そして無山との別れや真実を知る日がやってくる……、という構図に、少年漫画的な熱血要素ではなく、日常から脱しきってはいないゆるめの(けどしっかり怖い)ホラーが混ざって新感覚です。

初音は見ていると人生頑張らなきゃなーと思えます。「魔法使いの娘ニ非ズ」のほうも感想を書いていきたいです。